本栖湖スピードダッシュ2010
本栖湖スピードダッシュ2010
6月5〜6日
山梨県本栖湖ファンボードビーチ
写真・文/池野谷健二
浅野則夫が逃げ切る。最高スピード66.30km/h
GPSを利用したスピード競技の『本栖湖スピードダッシュ2010』。今年は場所が同じ本栖湖ながらもドラゴンビーチから対岸のファンボードビーチに移して6月5〜6日に開催された。
参加者が30名前後と残念ながら少なかったが、2日間ともに本栖湖らしい風に恵まれ、競技の方は9ラウンドも消化されるという大当たりで、予想通り浅野則夫が順位点、最高スピードともに1位となり、昨年に続く連覇を果たした。
このスピード競技は、参加者全員がGPS計測機器を装着し、1ラウンドごとに決められた時間を走り、その時記録されたスピードで、レースのように順位を付け、そのポイントで優勝が決定する。それとは別に、最高スピードの順位も争われる。今回は1〜8ラウンドが20分間、最後の9ラウンドが15分間で競われた。
初日はおこなわれた5ラウンドでは、浅野則夫が1位2回、2位2回、最高スピード63.40km/hで順当にトップに立っていたが、1位2回、2位1回、最高スピード62.85km/hで、酒井亨が僅差で2位に付けていた。なお両者ともにセイルエリアは8.4㎡である。
2日目も同じようなコンディションで昼過ぎから南風が入り始め、ガスティながらも2時頃スタート。なかなか60km/hを超える記録は出なかったが、夕方になるに従って、風は強くなり安定していった。ラウンドは6、7、8と順調に消化され、浅野がリードを守ってはいたが、酒井が7、8ラウンドでトップを獲り、この時点でそのポイント差は0.7まで肉薄していた。
そして最後の第9ラウンド。ブローが安定していることもあって、計測時間は15分に短縮された。また9ラウンドまで成立すると2カットになることもあって、このラウンドの結果次第では、鉄板と言われ続けた浅野則夫のレース&スピード系競技での連勝記録にストップがかかるという、歴史的な瞬間が訪れる可能性があったのだ。
一斉に湖面に出て行く選手たち。浅野、酒井ともにブローの吹き出し口である風上の方の海面を狙って上っていく。風は安定したとは言えガスティで、本栖湖らしく止まってしまう時間も場所もある中、浅野、酒井ともに確実にブローに合わせてスピードランを重ねていたが、酒井の方がコンスタントな走りを見せていた。一方、浅野は途中でランを中止してタックしたりと、これだ!というチャンスを狙っているのは明らかだった。肉眼で見ていた感じでは、ここまで最高スピードは、酒井が62〜3km/h、浅野は60km/h強といったところか。
いよいよ残り時間が少なくなって来た。浅野勝利の盤石の方程式がついに崩れるのか、見ていた私はその可能性がついに高まってきたと感じていた。さらに酒井はもう満足できたのか、残り時間があるのにビーチに帰着するような走りを始めていた。
とその時だった。上の方から来る強いブローに合わせて、浅野の走行角度が大きく変わった。完全にクォーター程度の下りになり、それが長く続きながらさらに深くなっていった。周囲の選手と明らかに角度も、そしてスピードも別次元のものとなっていた。並ぶ間もなく抜き去り、私の視界を右から左へと走り抜けていった。
「出たな、これは」
私は思わずつぶやいた。一方の酒井はこの時もうすでにビーチ間際に帰って来ていた。
すると浅野も、そのランを終えると真っ直ぐビーチに帰って来た。本人も手応えを感じているのは明らかだった。望遠レンズを除くと、彼は笑っていた。納得のランだったのは確実だった。
結局、この第9ラウンドは浅野が征した。そのスピード66.30km/h。今大会の最速ランであり、昨年の彼の記録65.60km/hをも0.7km/h上回っている本栖湖レコードでもあった。酒井も64.30km/hという彼の自己ベストを記録していたが浅野には及ばず、この結果、順位点の方でも浅野が逃げ切り、彼の神話は崩れなかったのである。
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