• home>
  • RACE INDEX>
  • オリンピックへの道・VOL.2 ISAF WORLD CUP #2 MIAMI OCR
富沢慎、見事にメダルレースに進出し9位
  • 日 程:1月24日~1月30日
  • 開催地:アメリカ・マイアミ
  • 出場者:RS:X 級:富沢慎(関東自動車工業)、高橋良典(関東学院大学)
  • レポート&写真:宮野幹弘(コーチ)
  • 参加艇数:(RS:X級:14カ国、38艇 )
  • 大会公式サイト http://rmocr.ussailing.org/

 2009年からISAFのワールドカップサーキット計7戦開催されている。このサーキットでは次期ロンドンオリンピックのセイリング競技種目が行われ、当然ウインドサーフィンの「RS:X級」も含まれている。2010年の「RS:X」JAPANウインドサーフィンチームは、第2戦マイアミ、第4戦イエール、第7戦ウェイマス出の参戦を予定しており、このレポートはその第2戦マイアミ大会の模様である。

大会前日ISAFワールドカップ第2戦開始

  2009年12月にオーストラリアのメルボルンで始まった、ISAFワールドカップの第2戦になるマイアミOCRが、アメリカ・フロリダ州のマイアミをベースに開催された。今年は2012年のオリンピック種目(10クラス)とパラリンピック3クラスが実施され、昨年よりも多い448 艇、642 名のセイラーが集まった。アメリカやカナダをはじめイギリス、フランス、オランダ、イタリア、スペイン、デンマークなどのヨーロッパ選手も多く参加。

 RS:X級は2009年世界選手権優勝者のイギリス:Nick Dempsey、2位オランダ:Dorian Rijsselberghe、3 位イスラエル:Nimrod Mashiah のトップ3の選手たちと東アジア大会金メダリストの富澤慎選手がどのような戦いをするのか、また、フォーム改良をして気合の入っている高橋良典選手の走りに注目だ。

オープニングセレモニー

大会会場とセッティング風景

大会2 日目 ハリケーン接近

 今日の予報は10 から12ノット。この風域は日本人選手たちの課題の一つ、アンダープレーニングでのレース展開が予想される。選手たちはセッティングを終え、気象状況・レース展開での注意点・フォーム・セッティングの事を話していたところで、AP旗が掲揚。どうやら昨日行う予定だった計測が行えなかったため、本日行うこととなり、計測終了後レースが始まるとのこと。しかし、いつになってもレースが始まらないため大会スタッフに確認したところ、ハリケーンの予報が出ているのでしばらくレースが行えないとのこと。選手たちは、ハリケーンに備ヲてセッティングをばらし、道具を屋内へ移動。

 その後3時間から4時間のウエイティングが続き、やがて大雨。ハリケーン予報は消えることがなく、本日RS:X級はレースを行わず終了。今まで私たちが経験したことのないハリケーンが多いアメリカならではの1 日だった。

 明日の予報は北の風14から15ノット。スピード勝負のレース展開が予想される。日本人選手はワールド終了後スピードを上げるためにセッティングやフォームの改良を行ってきた。明日のレースで、世界トップレベルに立ち向かうことができるのか期待したい。


富澤選手のコメント
『練習をしてきたアンダープレーニングでのレース展開が予想されていただけに、ハリケーンで今日のレースがなかったことはとても残念。予報ではレース期間中に何度か同じようなコンディションがありそうなので練習の成果を出せればと思う』

高橋選手のコメント
『初めて経験したハリケーンでのレース中止には少しびっくりした。明日はスピード勝負のレース展開が予想されるのでフォームを改良した成果を見せたいと思う』

大会3 日目 チームJPN4選手 3日目を終えて 通算順位変わらず

 昨日、ハリケーンの予報でレースができなかったため、本日は3レースの予定。レース前に気合の入りすぎでフォームが固くなっている高橋選手にリラックスするように話をし、ゼネリコ後11:50 に、風向20 度から30 度、風速8 から11 ノットとガスティコンディションで男子第1レース目がスタートした。好スタートの後、風が右に大きく振れたため、すぐさまタック。風の強弱にうまく合わせることができず、アンダープレー二ングでスピードを意識していた富澤選手。ダガー中心で角度を気にしていた高橋選手、共に周りを(スタート3 分前)しっかり見ることができず、2 人共、10番台中盤でフィニッシュ。1レース終了後選手たちに、しっかり周りを見て、風の強弱に合わせスピード(プレー二ング)と角度、この2つを使い分けるように話しをした。13:00、風向40 度から50 度、風速7から9ノットと少し風が落ちた中、2レース目がスタート。2人とも好スタートを切り、周りをしっかり見ながら富澤選手が6位で1下を回航。その後、弱い風ながらもスピードと角度を上手く使い分け前4人を抜き2位でフィニッシュ。高橋選手も1レース目より順位を上げ14位でフィニッシュ。このガスティなコンディションの・A2レースともにス ピード(プレー二ング)を上手く維持して走ったオランダ/Rijsselberghe, Dorian 選手が2位以下を大きく引き離しフィニッシュ。20位以下の選手をDNF にしてしまうほどの速さを見せた。

この日上位に入った選手たちはしっかり周りを見て、ガスティなコンディションながらもスピード(プレー二ング)と角度を上手く使いわけ、スピード(プレー二ング)に乗るのも早く、風が落ちてもこのスピード(プレー二ング)を上手く維持している。今後日本人選手たちもスピード(プレー二ング)の維持ができるようにすることが課題だ。

スラロームコースのジャイブマーク   富沢が繰り広げる第4レースのトップ争い
スラロームコースのジャイブマーク   富沢が繰り広げる第4レースのトップ争い


富澤選手のコメント
『1レース目はスピード(プレー二ング)の事ばかりに集中してしまい、周りを見ることができなかった。明日は、2レース目のような走りをしたい。』

高橋のコメント
『ガスティなコンディションでのスピード(プレー二ング)に自信がなく角度を重視してしまった』

第3日 7レース成績

  • 成績 1R 2R
  • 富澤 慎 8位 15 ‐ 2
  • 高橋 良典 15位 17 –14

大会4日目 最終日を待たずして男子富澤選手 金メダルを掌中に!ウインドのJPN優勝は初の快挙!

 本日は予定通りのスタートのはずでしたが、海上では風がなく30分ほど海上待機。次第にレース海面に風が入り始め、運営サイドが準備をしている間に選手たちとセッティングの調整を行いました。1時間遅れの12:10、風向25度から35度、風速11から13ノット。全体的にきれいに風が入っている状態で、第3レースがスタート。2人ともに好スタートを切るも、いまひとつスピードに乗れず、1上を10番前半で回航。その後風が落ちスピード乗せられぬまま第3レースが終了。第4レースまでの間に選手たちと再度セッティング、フォームのチェックを行った。スピ[ドに乗るまでしっかりパンピングすることができない、特にフリーでは、何度もプレー二ングのチャンスを逃していたため、バテンテンションを緩め、リーチをタイトにしてパンピングをスムーズにできるようにセッティングを変更。コース取りについてもタックするタイミングを逃してしまい、行き過ぎてしまうことがあったので注意してコースと引くようにアドバイスをした。

 13:35 風向35度から40度、風速7から11ノットとガスティなコンディションで第4レースがスタート。富沢選手はセッティングを変えた成果が出たのか、スピードに乗り、しっかりとしたコース取りで1上を7位で回航。その後順位は入れ替わらず2上回航。得意のフリーに入り、前を行く選手たちはプレー二ングを維持することができない中、ブローに遅れることなくスムーズなパンピングでプレー二ングを止めず、一気に5人を 抜き去り2位で2下を回航。その後スラロームレグで1位の選手のすぐ後ろにつけ、最終レグではデットヒートを繰り広げるも、ほんのわずかな差の2位でフィニッシュ。高橋選手は、好スタートを切るも周りの選手に惑わされてしまい順位を落としてしまった。第4レース終了後、高橋選手には、風がぬけるときのセイル、体の位置などをアドバイスした。明日は、微風のパンピングコンディションでのレースが予想される。日本人選手にはチャンスなので少しでも順位を上げて行きたい。


富澤選手のコメント
『あと少しでトップフィニッシュだった。明日こそトップフィニッシュします』

高橋選手のコメント
『今日は周りに惑わされてしまい、もったいないレースをしてしまった。明日はこのような事がないように頑張ります』

第4日 9レース成績

  • 成績 1R 2R 3R 4R
  • 富澤 慎 6 位 15 ‐ 2 –12 - 2
  • 高橋 良典 19 位 17 –14 –24 - 23
    左:第7レース、スタートの激戦

右:富沢が繰り広げる第4レースのトップ争い

大会最終日 男子・富澤 金メダル、女子・須長 銅メダル チームJAPAN全体で獲得したメダル

 今日は、昨日までと違い天気の良い暖かい朝。選手たちに今日のコンディションを説明して、早めの出艇。セッティング、フォーム、フィーリングなどを確認してレース会場へ向かった。

 風は予報通りの風向60 度から70 度、風速7から12ノット。昨日のコンディションよりさらに安定しない難しいガスティなコンディションで、ゼネリコがあったもののほぼ定刻通りの11:40にスタート。この第5レーススタートにはブラックフラックが掲揚されており、高橋選手がスタートラインを出てしまい失格。富澤選手は好スタートを切るも、角度に苦しみまさかの1上17位で回航。その後、フリーでは、両サイドのブローをつかむことができず失速。順位を下げ19位でフィニッシュ。

 各選手には、今回のレースは今までの中で一番ミスが多いレースだったことを話した。順位が悪いところにいると状況判断が鈍くなり、周りを見ることができなくなる。しっかり周りを見て走ることが重要だとアドバイスをして、第6レースへ。13:15に風向同じく風速はさらにガスティになり6から12ノットと難しい風の中スタート。上手く左のブローをつかみながら走っている選手が上位で回航。富澤選手は1上を13位、高橋選手は15位で回航。同じ順位で1下を回航し、この後、レースの前のアドバイスのしっかり周りを見ることができるかできないかで大きく順位を変えた。左に風が振れていることに気づいてフリーを走っていた富澤選手はこの振れにうまく合わせ2上を8位回航。フリーでさらに1人を抜き7位でフィニ ッシュ。高橋選手はこの振れに気づくのが遅れ、26位でフィニッシュ。両選手共に周りを見る事ができているときと、できていない時の順位の差は大きい。しっかりと周りを見て状況判断ができれば安定した成績が取れ、上位に行くことが可能となる。

 富澤選手に関してはメダルレースに出場できるかが、明日のレースにかかっていた。明日はしっかり周りを見て上位でフィニッシュしてもらいたい。なお、高橋選手は本日で終了となった。


富澤選手のコメント
『第5レースは、上り角度に気を取られすぎて周りを見る事が出来なかった。明日は勝負の日なので気を引き締めて、攻めて行きたい』

高橋選手のコメント
『レース期間中1上は10番半ばで回航できるのだが、前の選手を抜くことばかり考え視野が狭くなってしまうので注意し、明日は1上の順位より良い成績でフィニッシュしたい』

最終日 大会最終成績

  • 1R 2R 3R 4R 5R 6R
  • 富澤 慎 10位 15 ‐ 2 –12 - 2 -(19) -7
  • 高橋 良典 22位 17 –14 –24 –23 -i38/BFD)- 26
  • ( )はカットレース

大会最終日 男子・富澤 金メダル、女子・須長 銅メダル チームJAPAN全体で獲得したメダル

 今日は、大会最終日メダルレース。予定より30分遅れの14:10にマークセット、風向180度から195度、風速8から9ノット。上りはダガーを使い、下りはプレー二ングするコンディションの中、レースが行われた。富澤選手はスタートの駆け引きの中、良いポジションを取ることができず、自分が思うサイドと逆サイドに行くことになり、その後上手く攻めきれなかったが、得意のスラロームレグで挽回し、7位でフィニッシュ。総合9位でレースを終えた。その中、冴えを見せたのは、しっかり風を読みレースをしたフランス:Bontemps Julien、スタートを失敗しネがらも攻めのレースを見せたイギリス:Dempsey Nick、が1,2でフィニッシュ。総合でも1 つずつ順位を上げた。

 今大会で富澤選手は冷静に風を読む力と、混戦の中からでも思った所からスタートをするボードコントロールができることがメダルレースに進めた原因だったと思う。ただ今回のメダルレースでは持ち味を上手く出し切れなかったことが悔やまれる。メダルレースで上位に入った選手は、フリートレースの戦い方と違う戦い方をメダルレースで見せていた。今後トップを狙っていくには、メダルレースの戦い方も課題の一つになるだろう。

 今大会で他国の選手と戦うことにより課題もいくつか見つかった。優勝したオランダの選手のようなボードスピード、誰よりも早くプレー二ングに入る技術。スペインの選手のようなしっかりとした状況判断でレースをまとめる力。世界のトップ選手と戦うためには、この課題をクリアしていかなければならない。そのために日本で練習に励み、次回のヨーロッパ遠征に挑みたい。


富澤選手のコメント
『メダルレースに残れて嬉しいです。ロンドン五輪までにメダルレースに出るチャンスはわずかと思うので気合を出して頑張りたいと思っています。これからも貪欲に勉強します』

綜合成績

  • Medal 1R 2R 3R 4R 5R 6R 7R 8R Medal
  • 富澤 慎 9位 15 ‐ 2 –12 - 2 -(19) -7 -6 - 9 - 14
  • Fleet
  • 高橋 良典 22位 17 –14 –24 –23 -i38/BFD)- 26 -23 –23