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  • テクニック記事『ウォータースタートをマスターする3つのコツ』
ウォータースタートをマスターしているかどうかで強風に対する自信は大きく変わる。セイルアップに力を使い果たし、体力面で強風に負けていた経験があっても、ウォータースタートをマスターすれば、躊躇なく強風に乗り出せる。上達のターニングポイントのひとつであるウォータースタート。これさえクリアすれば、タックやジャイブができなくたってウインドサーフィンの楽しみ方がワンランク上がるというもの。ベアの集大成と言えるウォータースタートは決して難しいものではないが、集中練習は必要だ。

 「セイルアップが辛い」と誰もが言う。でもウォータースタートをマスターするために、まず嫌いなセイルアップを思い出して欲しい。セイルの下に風が入り始めて軽くなってくるのは、風とマストがどの様な位置関係にある時なのかを。その位置関係が、まさに「水抜き」に直結する。テイルジャイブは、「起き上がり」そのもの。ベアの動作はウォータースタートの「足使い」にあたる。つまり、ウォータースタートは特別なものではないということだ。誰もが上達課程で経験し、マスターしてきたものの中にウォータースタートの要素は含まれている。シンプルに捉えていこう。まず起き上がるための向きを整えたい。次にセイルの水抜き、そして最後にベアの要領で起き上がる。この3段階をクリアすればいい。マスターしてしまえば、「何故ウォータースタートに苦しんだんだろう?」と思えるほど取るに足らないテクニックなのだから。


フワフワ浮かせて、グッと起き上がる

ウォータースタートを成功させるための手順の大半は陸上で練習できる。陸上で練習しておくことは、水抜き後のセイルの浮かせ方と起き上がる際のセイルパワーのコントロール。決して足に頼らずに、風の量を両腕で調整し、セイルが倒れないように浮かせておく動作から、起き上がる際のパワー調整まで、あまり考えずに腕が動いてくれるようになっておきたい。どのボードの向きだとセイルを浮かせづらいか、どの程度のパワーを得られなければ起き上がれないものなのかといった失敗も試しておくことになる。「ダメだ」と感じたら無理に先に進もうとせず、一端元に戻すというリカバリーがとてもウォータースタートには大切。焦らず、確実に、落ち着いて取り組むことが成功への近道だ。


風のパワーだけで起き上がる


ボード上に起き上がる練習をする上で大切なのは、決して足を使わないことだ。起き上がるためにはマストを風下方向斜め前方に突き出していくのだが、その時のセイルパワーを感触として掴みたい。陸上ではボードが動きづらいし、実際に海上にいる時よりも体が高い位置にあるから、足を使ってしまえば割とイージーに起き上がれてしまう。それでは意味がない。セイル手を引き付けながらもセイルを風下前方に起こしていく時に、どのどの方向にマストを突き出していくべきなのか、どの程度セイルを起こすべきなのかを把握する共に、セイルに引っ張ってもらうことを十分に体感できるように意識して練習していくことがとても大切だ。

 
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セイルの水抜きは、確かに最大の難関であろう。そして、実際にミスしている人のほとんどが、風向きとマストの角度がミスマッチしているのが原因となっている。つまりは、そこさえ正確に行えば、決して難しくないということだ。風速が十分ならば、気にしておくべきは風向だけ。風とマストを直角にする基本を忘れないようにしよう。風向さえ失わずにいれば、マスト対風向の角度は常に認識できるし、やるべき動作に間違いがなければ必ずセイルは水から抜けてくれる。「持ち上げるのではなく、抜く」ことをしっかりと意識に植え付けておくこと。ポジション作りの正確さと、セイルを抜く際の動作のスピード。そして何より焦らずに落ち着いて状況を判断すること。セイルの水抜きは面倒ではあるが決して難しいことではない。


頭上を通して風上に勢いよく引く

基本的な水抜きの方法は、ブームの上20〜40cm付近のマストを握り、頭上を通過させるように勢いよく風上にマストを引き抜く。この引き抜く動作のスピードが非常に大切。動きが遅いとセイルが浮き上がりにくい。セイルが大きかったり、どうしても力が入りづらくて動きが遅くなってしまう場合には、マストトップが僅かに風上に向くように風との角度を調整してやるといい。いずれにしても、ハーネスラインの位置が身体の正面に来るところまでマストを動かしていく必要がある。完全にセイルが浮き上がりきるまではずっとマストを握っていよう。慌ててブームを掴もうとすると、持ち替えの一瞬や体勢が変わることによってセイルが水に着いてしまったりしやすい。慣れてしまえばどうにでもなるものだが、最初は「正確に、確実に」。十分にセイルに風が当たる角度になるように慌てずに進めていきたい。

風とマストの直角が全て

うまくセイルを水から抜けないと感じたら、すぐに風向を確認しよう。浮力のあるボードは風に押されて向きを変えやすいし、海面のチョップで向きが変わっていることもある。「うまく抜けないな」と少しでも感じたら、自分のせいにせず、風向との関係が乱れたと思った方がいい。マストトップが風上に向いているまま水抜きすれば、風が入りすぎて前方に持っていかれやすいし、反対ならば風が入りにくくてブームエンドが抜けてこない。無理に続けてもうまくいかないことが多いし、時間も体力も無駄遣いはしたくない。また、応用として、マストのトップ付近から水抜きを行うこともよくある。あまりにセイルが水に潜っている時などはその方が効果的だ。

 
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リラックスするためのハーネスワーク

水からセイルが抜けてフワフワとセイルを浮かせられたら、後ろ足を載せやすいようにボードの角度を調節し、次に起き上がれるボードの向きへと調節し、最後にしっかりとしたベアの動作で、セイルパワーを生み出して引っ張り上げてもらうこと。最も慌てたくないのが、この「引っ張り上げてもらう」こと。ボード上に早く起き上がりたいという気持ちが強いほど、ついついブームを引き付けてしまう。ブームを引っ張って起き上がろうとしてしまう。ポイントは、引っ張り上げてもらうためのセイルパワーを十分に生み出すこと。風上に向きすぎているとパワーを得られにくいし、風下に向きすぎればオーバーパワーになりやすい。まさにその中間のポジションを見極めることが大切。


後ろ足の引き付けはベアの補助

風速が若干弱い時など、セイルパワーが不足していたら、後ろ足の補助を効果的に使っていこう。セイルを前方に起こしてパワーを得ようという動作と同時に、後ろ足でテイルを引き付ける。自分の体の下にボードを引っ張り込むようにすると、その動作だけでもよりマストは立ち、セイルに風を受けやすくなる。風速が十分な時にこの動作を強調してしまうと風が入りすぎることにもなりがち。もちろん、ウォータースタートに慣れてくれば、この部分を強調することで起き上がりは早くなるが、最初のうちはあくまでも補助的に使うことをオススメする。トレーニングとしては、後ろ足を引き付けたり緩めたりの動作を繰り返してみるといい。その効果の程はすぐに体感できるだろう。

シメの動作を忘れない

確実に走り出しに繋げるために、最終的な処理を忘れないようにしたい。オーバーベアリング的動作でセイルにパワーを与えて体を引っ張ってもらうわけだから、そのセイルパワーをいつまでも持続させていたら、ボード上に体が起き上がった途端に前方に飛ばされることになる。もちろん、飛ばされそうになることが悪いのではなく、そのパワーをコントロールすれば良いだけ。単純な話し、起き上がった時に前に引っ張られすぎだと感じたら、一端セイルを開けばいい。パワーをロスさせ、バランスを保てばいい。この動作がウォータースタートのシメ。起き上がることと走り出すことを繋ぎすぎないこと。間を取ってから次の動作に入る。これも大切な要素だ。

 
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