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COLUMN『実録!日本、いや世界初?!愛犬とウインドのタンデムレース』

 全日本実業団連盟主催の第22回横浜港ボート天国「真夏の大運動会」に、私は愛犬のアンディ(ゴールデンレトリバー/オス6歳)と、タンデムレースに参加しました。このクラスはアクアグライド(ゴムボートにセイルをつけたヤツ)に子供とのタンデムで参加するというのが基本ですが、主催者の好意によって、犬とのタンデムでの参加が実現しました。

 普段はマリンスポーツも許可されていない管理が厳しいこの海面を使用するこのイベント。おそらく犬がその海面をセイリングするなど、主催者としても行政側に申請しているわけはありませんから、もし目に留めて、管理者側が役人らしい融通が利かなさを発揮されてしまうと面倒なことになりそうかなと懸念されましたが、
「池野谷さん何か言われたら、主催者側から許可をもらっていると突っぱねてください」と、実連から心強い言葉をいただき、そして実際に何事もなく、逆に温かい目でみなさんて見守ってくれました。

 私の愛犬とのタンデム歴はもう10年近くになり、テレビや雑誌にもこのことで随分登場させてもらっています。また、8〜10m/s吹くオンショアコンディションの中、30kgを超える愛犬を乗せて、完プレしたこともあります。ですから、ぜひ一度機会があれば、タンデムレースに昔から参加したかったのです。今回念願が叶って嬉しい限りです。

 レースの方はビーチスタートではなく、桟橋からアクアグライドに乗り込み、沖まで引っ張っていかれてからの海上スタートでした。ビーチスタートならば普段行っているので問題はないのですが、いかんせんここは港です。ビーチはまったくありません。不安定な細い通路から桟橋にわたり、次にかなり落差のある浮き桟橋に飛び降り、そこからさらにボードに乗せ、さらにかなり沖まで牽引されていくというのは、愛犬にとっても初体験なのでどうなることかと思いました。また、この日は暑かったので、途中で海に飛び込んでしまうことも懸念されました。

 しかし、アンディに心配は無用でした。少しだけ災害救助犬の訓練を受けていたので、細い通路も怖がらず、不安定な浮き桟橋にも一緒に飛び移り、キョトンとしていましたが、牽引されている間も、引き波で遊ぶことなく(普段は遊ぼうとすることも多い)よく言うことを聞いてくれました。

 レースは2レース行われ、海上スタートから1つのジャイブマークを廻航し、浮き桟橋手前のフィニッシュラインを切るというもの。コンディションは0〜2m/sと完全な微風。8組が参加しましたが、元オリンピック候補選手の母子はいるし、ほとんどは私とアンディを合わせた体重よりも軽いコンビ(私たちは100kgオーバー)が多いみたいで、結構マジに上位を狙っていた気持ちは、すぐに萎んでしまいました。また、思ったよりも水が汚れていて、茶色い海にアンディが落ちることの心配がムクムクと頭を持ち上げてきたことも事実でした。しかしスタートホーンが鳴るとそんなこともどこかに吹き飛び、久しぶりに微風下での高い集中力でのセイリングを楽しみました。

 第1レースはセイルが他の艇の下に入り、セイルアップするとすでにスタートでビリとなっていました。また、愛犬が飛び込むのを心配し、座ったままのセイルアップであり、その後のセイリングも座ったままの走りとなりましたので、すぐに私の腰は悲鳴を上げはじめましたが、ほとんど無風の中、それに耐えてひたすらパンピングしました。
 トップグループはもうフィニッシュ間近でしたが、ジャイブを無難にこなして、アンディを一度も落水させることなく、無事に7位でフィニッシュしました。

 人・犬ともに勝手が分かったので、次はもう少しいいだろうと2レース目に挑みました。
 実際にアンディは、2レース目の乗艇のとき、もうわかったよといった感じで、通路をすり抜け、浮き桟橋に飛び降り、そしてほとんど自分でボードに乗りました。「やっぱりお前はスゴいよ」と、親バカごころを満喫しながら、私はスタートラインに向かいました。

 第2レースのスタートはほぼジャストでした。上位3位以内にいたと思います。しかし、やはり上位に来る組は風がない中、ゆっくりですがスルスルと走っていきます。こちらは座ったままでのパンピングがイマイチ決まらずに、せっかくの好スタートの貯金はすぐに吐き出してしまいましたが、ジャイブマークの時に後ろに2〜3艇いるのがわかりホッとしました。またアンディがジャイブのセイル返しのときに上手にフットを潜り、ロスなく廻航できました。私たちはそのまま無事にフィニッシュしましたが、帰るべき浮き桟橋には上りきれずにもたついていると、陸が目の前に見えるということもあって、ついにアンディがジレて茶色い海に飛び込んでしまいました。陸にはすぐに着きますが、浜はなくコンクリートの岸壁ですので、私はかなり焦りました。

 幸い、岸壁沿いに踏み台のような幅が狭い踊り場があったので、アンディはフジツボがつくその上に登るとをスタスタと走り、桟橋にわたる細い通路の手すりの下をスルリと潜って無事に公園内に戻りました。

 結局、第2レースは6位で総合も6位という結果でした。成績はいまいちでしたが、私にとっては人犬一体のとても充実感のあるレースとなりました。また、アンディにとっても、とても刺激的だったらしく、このあと、しばらくの間、クルマに乗せると海に行ってレースに出るんだと勘違いし、車内で興奮しっぱなしの状態が続いてしまいました。  ウインドサーファーの中には愛犬家の方も多いと思います。ぜひ今度は当ウェブマガジンが主催して「ワンコタンデムレース」を開催しようと思った次第です。