一般ユーザーがレースセイルのポテンシャルを楽しめる
最速を誇るレーシングセイル。おそらく誰でもこのスピードを味わいたいと思うだろう。ただ現実は厳しく、それを味わうには技術、ボード、経済的理由等々、さまざまなハードルをクリアしなければ成し得ないのも事実。しかしノースセイルは、2010年モデルにおいてこの高いハードルを急激に低くすることに成功したのである。
RAM F10
もはやセカンドレースセイルという呼び方はふさわしくない
「RAM F10」はノースセイルのスピード系ラインナップの中でレーシングセイル「WARP 2009」の次に位置するモデルだ。WARPの90%のパフォーマンスを持つように作ったと公表されているとおり、革命的な設計であるINDEPENDENT SHAPING CONCEPTとTWIN TRIM CLEW採用し、WARPと同等の高いセイルのポテンシャルを生み出しながらも、そのWARPをよりユーザーフレンドリーに改良している。INDEPENDENT SHAPING CONCEPTとは、デザイナーのカイ・ホフが生み出したコンセプトで、セイルを従来の1シェイプで作るのではなく、ボディとスリーブにそれぞれ異なるシェイプを取り入れ、その組み合わせでトータルシェイプを造り出すというもの。倍の時間と緻密な計算が必要だが、多くの利点があり、セイルデザインの世界で革命と言われている所以でもある。バテンが7本とWARPより1本少なく、カムも4カムでも3カムでも使えるなど、軽量化と汎用性を高め、またDOUBLE SEAM TECHNOLOGYを採用して耐久性も高い。さらにTT TOP IIと非常に硬いボックスバテンの使用で安定したフォイルを生み出し、WARPほどではないがややワイドなAEROマストスリーブが、わRPと遜色ないセイルシェイプを生み出している。
この結果、WARPのポテンシャルと、ユーザーフレンドリーの両立という夢のようなバランスが実現。実際、GPSでも優れた記録が出ていて、ハイスピード域での扱いやすさ故に、熾烈な戦いが繰り広げられるワールドカップでも、使用セイルとして登録されているほどだ。『スピードはレーシングセイル、扱いやすさはフリースラロームセイル』これが、新しいRAM F 10。もはやセカンドレースセイルというジャンルを超越し、レーシングセイルと言っても不思議ではない。その憧れのレーシングスピードの世界はもう遠い存在ではなくなった。
S-TYPE
普通の人がレーシングテイストをストレスなく味わえることを実現
スピード系ラインナップで、RAM F 10の次に位置するのが「S-TYPE」。RAM F10がWARPを見事にユーザーフレンドリーにすることに成功したモデルならば、このS-TYPEはそのRAM F 10を、どんな人でも扱えるレベルまで、さらにユーザーフレンドリーにしたモデルと言えるだう。INDEPENDENT SHAPING CONCEPTではないが、バテンはRAM F 10と同じく7本で、2カム3カムが選択できるシステムを持ち、ミドルワイドのマストスリーブとともに効率の良いセイルシェイプを持っている。ミドルワイドのスリーブはWスタートを容易にし、採用されたカットアウェイクリューが短いブーム長を実現。軽快で容易なハンドリングも生み出している。さらに1マストコンセプトのセイルであり、DOUBLE SEAMやDURATECH FOOTの採用により耐久性も高く、カムセイルらしからぬ、極めて高いそのユーザーフレンドリー度数を持っている。
セイリングフィーリングは普通の人が乗ったらレーシングセイルとほとんど変わらないパワーやスピード性を感じることだろう。しかしコントロールはフリーライド然としていて、載せるボードも選ばない。RAM F 10はセイリングスキルがある程度高いアマチュアレーサーレベルの人にオススメだが、極めて一般的なレベルの人が最新のレーシングテイストをストレスなく堪能するには、あくまで“フリーライドセイル”に属するこのS-TYPEが最適と言えるだろう。