台風がらみしかコンディションが整いにくい、湘南・大崎で台風ライドを始めて動画に収めた柳沢利彦プロ。
「エンジン付きの特等席」と彼が評すジェットでの撮影は、ゲレンデを知り尽くしているからこそできるワザ。
また、彼とは別に2日間にわたってビデオを回し続けた人もいる。そのレポートと貴重な動画をお届けしよう。

台風12号は至極のコンディションを送り込んだ

下らせて、まっすぐ前に飛びマストを出す。これがフラカのやり方だ

 『大崎レフトのクラウドブレイクの上、「エンジン付きの特等席」で湘南のウィンドサーファーによるスペクタルなショーを拝見した。』

文:柳沢利彦

 台風12号は南太平洋から真っ直ぐと北上し、四国から日本海へと抜けるコースを辿った。台風による被害も絶大であった。エキストリームスポーツとはいえ、自然を冒涜し、楽しいだけを追求してはいけない事を常に考えながら、もがき、模索していた。
「最小限の力と最短の動きで回りにある最高の状況に身を置く。」
これが12号での目標。

 8月25日に発生してから、太平洋側では程よいウネリが届きはじめ、オフショアが続いた。湘南の各サーフポイントではサーファーによる迸るセッションが繰り広げられた。日に日にウネリの向きがシフトしていき、風向きが少しずつ変わる。「台風が近づいてくる」そんな様子が真夏の終焉を迎える湘南から明らかに見て取れた。
 30度線を越えた辺りから、ウィンドサーフィンにも絶好のコンディションが期待でき、いくつかのシーンを想像し始めた。それは10年前の9月11日。藤沢、鎌倉を台風の目が通過した時ととてもよく似ていた。すうっと、テトラから飛び降りた当時の記憶が蘇る。懐かしい。10年後のこの度は台風との距離があるため、関東に雲はかかっていなく、雨もない。風も安定していて、セットの周期も安定していて、よみやすい。

9月。
 その日から湘南のマリンスポーツ愛好家は海水浴規制から解放され勢い良く海に飛び込める日。
この月の変わり目と台風との距離がとても微妙であったが、9月2日と翌日3日に風と波のタイミングが湘南にフィットした。
 御前崎の人達とも連絡を取り、その時合いを伺っていた。野口さんはその一瞬に駆けつけた。
2日、風向きが昼前から少しずつシフトしていき、大崎レフトにはレギュラーのウィンドサーファーが示し合わせたように集まる事が想像でき、干潮から満ちに向う時間に鎌倉ローカル達は大崎のレフトブレイクに向う準備を進めていた。僕はジェットとカメラとを準備し、皆をサポートする。東よりの風では材木座のインサイドと大崎のインサイドには風が入らない。
 このオフショア気味のコンディションで、台風の波を思い切り攻めるにはジェットの存在はウィンドサーファーにとって大きく、レイルを強くプッシュできる。セットのピークは遥か沖から迫り立ち、ボトムターンを繰り返す。ややマッシーな波だが、海底の棚に当たると綺麗なレフトブレイクとなる。リーフブレイクでのウィンドサーフィンはやはり、湘南の台風ライドの骨頂だと思った。インサイドに入ってくると棚に乗り上げた水が勢い良く流れ、インサイドボウルセクションが出来上がる。風の入っているいつもの大崎では波毎によって、このセクションが安定しないが、この日の大崎は違った。

 ここ大崎は僕がまだ海に入る以前に港建設のため、沖合に消波ブロックが入れられて、本来のレフトのチューブは姿を消したそうだ。そのレフトの波はどんなだったかと想像しながら、僕は大崎レフトのクラウドブレイクの上、「エンジン付きの特等席」でウィンドサーファーによるスペクタルなショーを2時間程、拝見した。
 カメラはあくまで、記録としてのものだったので、ウォーターショット映像は期待しないで欲しい。レギュラーメンバーの幾本か凄いライディングもあったが、レスキュー中でカメラには納められなかった。そのチャージは僕のマナコに納めたので、語りぐさにしましょう。

 2時間程で大崎を離れてしまったが、その後の様子を僕の大先輩が近くのマンションから映像に納めてくれていました。
そちらの画像も合わせてどうぞ。
逗子からも多くのウィンドサーファーが集まり、2日間は終日ウィンドサーファーで賑わう湘南でした。